VRのビジネス活用が広がっていく中で、VRの導入を検討している企業の方も多くいらっしゃると思います。
VRを企業に導入する際、利用したい目的に合ったVRデバイスを選択することが重要になります。そこで今回は主なVRデバイスを紹介し、特徴を比較していきたいと思います。
まず一口にVRヘッドセットといっても大きく分けて3種類のヘッドセットが存在し、大きく
・スマートフォンをゴーグルにセットする、スマホVR
・別途機器が不要な、独立型VR
・パソコンと接続して使用する、PCVR
の3種類に分けることができます。
スマホVR
この中で最も手軽で安価なものがスマートフォンをセットして使用するスマホVRです。
この代表例として、「Google Cardboard」があります。
プラスチック製のスマホVRと同様の仕組みで、段ボールで組み立てることができます。
プラスチック製のものより没入感は劣りますが、999円と、低価格で手に入れることができる手軽さが大きな魅力になっています。
安価で大量に導入できるので、ひとまず多くの人に360°映像を見てもらいたいという用途などに向いていると言えます。

Google Cardboard:https://vr.google.com/intl/ja_jp/cardboard/
独立型VR
次に手軽なものが独立型VRです。
機能も充実しつつ、リーズナブルな価格で手に入るという魅力があり、片手コントローラーとヘッドセット単体のみでの操作が可能です。
このシリーズで最も有名なものがFacebook傘下のOculus社から今年発売された、「Oculus Go」というヘッドセットです。
ディスプレイが内蔵されており、スマートフォンをセットする必要やパソコンに接続する必要もなく、ヘッドセット単体ですべての操作可能です。また解像度も2560×1400ピクセルあり、デバイス単体では後述のPCVRの2機種よりも高い解像度を有しています。
また、トラッキング機能については「3DoF」と呼ばれる、ヘッドセットの前後左右の動きのみを感知するヘッドトラッキング機能が搭載されています。
価格は23,800円からでかなり安価に抑えられています。
片手のみでの操作で十分なコンテンツや、空間内を移動する必要のない映像視聴中心のコンテンツは「Oculus Go」で十分と言えるでしょう。

Oculus Go:https://www.oculus.com/go/
PCVR
そして、最もハイエンドなものがPCに接続して使用するタイプのPCVRになります。
PCVRの大きな特徴として、PCを使用するため高度なグラフィック表現や、外付けセンサーにより「Oculus Go」の「ヘッドトラッキング機能(3DoF)」に加えて、体の前後・左右・上下の動きを感知できる「モーショントラッキング機能(6DoF)」、さらに「ルームスケール」と呼ばれる空間内での移動が可能になります。
高いスペックを誇る一方で、ハイスペックなPC、ヘッドセット、両手コントローラー、センサー全て合わせると15~30万円ほどの費用がかかってしまい、他のデバイスと比べ、導入のハードルは高いと言えます。
PCVRの代表的なものとして「HTC Vive」、「Oculus Rift」の2つがあります。
まずは「HTC Vive」です。
こちらはHTC社の開発したVRヘッドセットで、現存するヘッドセットの中で最もハイエンドなシリーズとなり、そのため価格も64,250円とやや高めになります。
ディスプレイはフルHD(2610×1200)の解像度があり、かなりリアルな映像体験が可能です。
また、ポジショントラッキング機能(6DoF)により現実での動きがVR空間上に反映され、よりインタラクティブな体験が可能です。加えて、最大3m×4mの空間においてモーショントラッキングが可能な「ルームスケール」により、VR空間内で歩行したりとより没入感の高い体験ができます。
またビジネス向けに、体験イベントなどで使用する場合向けに商用ライセンスやその他付属品込みのセットも用意されています。

Vive HP:https://www.vive.com/jp/
2つ目は「Oculus Rift」です。こちらもOculus Goと同じくFacebook傘下のOculus社から発売されたVRヘッドセットです。価格帯はOculus Touchと呼ばれるコントローラーとコード類すべて込みで45,000円です。
ディスプレイ、ポジショントラッキング、ルームスケールなど性能はほぼHTC Viveと同等でありながら、価格が抑えられているためコストパフォーマンスに優れています。

Oculus Rift:https://www.oculus.com/rift/#oui-csl-rift-games=robo-recall
また2者の大きな違いである両手コントローラーに関しては、HTC Viveは棒状のスティックのため「振る」動作、Oculus Riftは「握る」動作を直感的に操作できるように設計されています。

一つ欠点として、Viveにくらべて対応しているゲームコンテンツが少ないという事実がありますが、ビジネスに活用する場面を考えると大きなデメリットになるとは考えにくいでしょう。
コストパフォーマンスやコントローラーの適正を考えるとOculus Riftは強くおすすめできるデバイスです。
Oculus Quest
これら3種類のデバイスの他に新たに注目を集めているデバイスとして、「Oculus Quest」を紹介します。
「Oculus Quest」は2018年9月に行われたOculusの開発者会議Oculus Connect5(OC5)にて19年春に発売されることが発表されたデバイスです。
Oculus社から発表されたモーショントラッキング機能(6DoF) が付いた独立型ヘッドセットで、多くの注目を集めています。
「Oculus Quest」がここまで大きな注目を浴びている理由として、「Oculus Quest」の大きな特徴である「インサイドアウト方式」を採用している点が挙げられます。
「インサイドアウト方式」というのはVRヘッドセットをトラッキングする際に用いられる方法の一種で、VRヘッドセット単体でトラッキングができる機能のことを言います。対して、これまで紹介した「Oculus Rift」や「HTC Vive」は、「アウトサイドイン方式」というセンサーを置いてトラッキングを行う方法を採用しています。
そのため「Oculus Quest」では、位置を検出するための外部装置としてセンサーを設置する必要がなくなりました。
またもう一つの特徴として「6DoF」トラッキングを採用しているため、「HTC Vive」や「Oculus Rift」と同様に体の上下・左右・前後の動きを感知できるモーショントラッキングが可能です。
「Oculus Rift」との性能の差を述べるなら、CPUをヘッドセットに搭載して稼働させているため、PCと接続して使用する「Oculus Rift」と比べるとグラフィック等の処理能力は落ちる点です。しかし、ディスプレイ自体の解像度は片目あたり1440x1600とPCVRに全く劣っていない解像度を有しています。
さらに、これだけの性能を誇っていながら価格は399USドルとかなり抑えられています。
PCVRだと導入の際に高スペックのPCも必要で導入コストがかなりかかってしまいます。その点、高い性能を持つ独立型ヘッドセットの登場は手軽にハイエンドVRを手にする機会を増やし、さらにこれまでの3種類のVRデバイスに加え、より多くのニーズに応えることができるようになりそうです。

Oculus Quest:https://www.oculus.com/quest/
デバイスの選び方について
ここまで主なVRデバイスを紹介してきました。
では実際にVRをビジネス場面に導入する際、どのようにしてこれらのデバイスを選ぶべきなのでしょうか。
一つの選び方として価格帯による選び方がありますが、この選び方はあまりお勧めはできません。価格帯のみで安易にデバイスを選択してしまうと、VRを使用する用途とデバイスの適正が噛み合わない恐れが高くなってしまうからです。
例えば、実現したいVR体験が両手を使うコンテンツなのにコントローラーが付属していないスマホVRや、片手のコントローラーしかない「Oculus Go」を使用しても意味がなく、PC VRを選ぶのが最適と言えるでしょう。一方、VR体験で両手の操作や空間を歩き回る操作が不要な場合は、反対に「Oculus Go」などで十分な場合もあります。
VRというのはあくまで手段であり、実現したいゴールや体験を考慮した上でどのデバイスを使うのがベストなのか考えるべきと言えます。
体験を考える際には、例えば下記のような要素を考慮すると良いです。
1つ目は、VR空間内を歩き回る必要があるか。歩き回るVR体験の場合は、6DOFやトラッキングという機能が必要になってきます。この場合、PCVRである「Oculus Rift」や「HTC Vive」、または「Oculus Quest」が適切と言えるでしょう。
2つ目は、両手を使ったインタラクティブな体験がしたいか。これにより、コントローラーの有無も変わってきます。両手の操作が必要ないなら、スマホVRや片手のコントローラーのみが付属している「Oculus Go」で十分な場合も多くあります。
その他、必要な解像度や表示したいグラフィックのクオリティ等も最終的なデバイス選びの際には必要となってきます。
まとめ
これまで紹介してきたようにVRデバイスは大きく分けて3種類あり、それぞれに特徴を持ち合わせています。それらを正確に把握し、自分が実現したいVR体験はどのようなものなのかを熟考した上で、その体験に最も適したVRデバイスを選択することが重要となります。
是非、この記事で紹介したVRデバイスの選び方を参考にしていただき、皆様のVR導入が満足度の高いものになれば幸いです。
記事:中町諒佑