エンターテイメント分野だけではなく、VRのビジネス利用は日々広がりを見せています。
そんな中、VRを自社に導入してみたい、検討したいと考えていらっしゃる方も少なくないと思います。
今回はそうした方に向けて、ビジネス用途にVRを利用したコラボレーションサービスを開発し、当メディアの運営企業でもあるSynamonで、ビジネス担当としてVR活用を様々な業界に提案している武井に、VRのビジネス導入の疑問にずばり答えてもらおうと思います!
目次:
1. エンタープライズVRとは何か
2. VR活用のメリット・活用場面
3. 導入コスト
4. 導入効果の見積もり
5. エンタープライズVRの現状と今後
6. その他アドバイス・注意点
プロフィール
■武井 勇樹(たけい ゆうき)
一橋大学商学部を卒業後、株式会社SpeeeにてWebマーケティングのコンサルティングに従事。2016年10月よりUC Berkeley Extensionへの留学のため渡米し、在学中にYコンビネーターを卒業したSaaSスタートアップGigwellにてインターンを経験。2018年5月に株式会社Synamonに入社し、現在はBizDevや広報といったビジネス全般のマネージャーを担当。
インタビュー・文章:中町諒佑
本日はよろしくお願いします!
武井:よろしくお願いします!
早速ですが、質問していきたいと思います。
まず、「エンタープライズVR」と聞いてうまくイメージがつかない方もいらっしゃると思います。
武井:VRというとゲーム、エンタメなどのBtoC分野を想起しがちですが、製造業や医療、不動産、教育などBtoB向けにも活用されています。そうしたBtoB向けのVRを総称して、エンタープライズVRと呼んでいます。
特に海外だとそう呼ぶことが多いですね。
VRを導入することによりどのようなメリットがありますか。
武井:VRの特性のメリットは大きく3つあります。
1つ目は3Dデータを立体的に見れるということ。
製造業や不動産を考えてもらうとイメージしやすいと思います。
よりリッチな情報でのコミュニケーションが可能になります。
2つ目は「情報」ではなく「体験」として伝えられるという点です。
研修や教育にVRが活用されている主な理由がこれに当たります。
より没入感をもった「体験」として相手に伝えることができる。
3つ目はコミュニケーションが変わることです。これは1つ目と2つ目にも関わってくるのですが、没入感や臨場感があることで会わなくてもコミュニケーションが図れるということです。
例えば、現場に行かなくても研修や接客ができたり、実際には会っていなくてもあたかも会っている様な感覚で会議ができる。
VRを活用することでビジネスでのコミュニケーションが変わると感じています。
メリットという点ではBtoBもBtoCも共通のようですね。
では企業にとって具体的にどのような活用場面が考えられますか。
武井:ビジネス用途でわかりやすい例としては、現実では再現が難しい空間での作業を行うときです。
危険な場所での作業や事故の体験なども体験できてしまう。間違った操作方法をしてわざと機械を壊してしまうといった体験までできてしまいます。
こうした現実ではコストが高すぎてできないようなこともできますね。
例えば、医療だと毎回手術の練習に人体を使うわけにはいかない。不動産だとモデルハウスを作るとコストがかかる。製造業の場合だとプロトタイプを作るだけで数千万かかってしまう場合がありますから。
参考リンク:https://xrbizmag.com/archives/198
メリットは大きい一方で、導入の際のコストはやはり気になる点だと思います。どの程度の導入コストが想定できますか。
武井:これはやりたいこと次第としかいえないですね。(笑)
VRのソフトウェアは大きく分けて2種類あります。
1つは3DCGで作るタイプ。
これはゲームに近い感覚です。空間を自由に作り出したり、空間内での自分が動いたり、モノを動かしたりできるので、実現したい体験を柔軟に作ることが可能というメリットがあります。
しかし、作るためにはすべて3DCGのモデリングを行う必要があるためコストが高くなってしまうというデメリットもあります。
2つ目は360°画像で作るタイプ。
これは360°カメラがあればコンテンツとしては完成します。そのためコストはかなり抑えることができます。その反面やはりデメリットもあります。
これは言ってしまえば、写真の中に入り込んでいる状態なので、写真の視点のみになり、空間内で何かを動かしたりすることはできません。
3DCGのコンテンツに比べ、手軽ではありますがやれることは絞られます。
例えば、不動産内見なんかは360°画像が利用されることが多いです。
多くの物件のコンテンツが必要なため360°コンテンツで量産していく必要があるためです。
しかしそれが今後新たにできる予定の建築だと現物がそもそもないから3DCGで作る必要があります。
その代わり、3DCGで作ると家具の位置やキッチンのタイプを変えてみたりとシュミレーションが可能です。
ですから、どんな体験を提供したいか、何を作りたいかでどちらのタイプのソフトウェアを作るか異なってきます。
さらにVRコンテンツを体験するにはこうしたソフトウェアとVRデバイス(ヘッドマウントディスプレイ)といったハードウェアが必要になると思います。
こちらは数千円から30万円ほどかかるものまで非常に幅が広いです。
この組み合わせがまた非常に難しいところで、最終的なゴールを明確にして一番現実的な選択をとることが重要になります。
あくまでVRを使うことが目的になるのではなく、提供したい体験内容というゴールありきで考えることが大事です。
VRのソフトとハードは大きくこのようにグラフ化できます。
目指したいゴールがどこの象限と一致するのか考える必要があります。
例えば、観光などでまずは手軽に知ってもらうといった目的で大量にローエンドのコンテンツを配るのはわかるのですが、これとは別にゴールが明確ではなくとりあえず安くVRコンテンツを作りたいという理由だけでローエンドを選択すると、そもそもVRで何をやりたかったのもわからないという結果になってしまいます。
まずは実現したいゴールやVR体験を明確にし、それに応じて3DCG、360°、どちらのソフトウェアを作るか、どのVRデバイスを選ぶかを考えていくわけですね。それによって大きく導入コストも左右されてきますが、その点が明確になれば想定されるコストも定まっていきそうですね。
2018年9月にPCを必要としない高性能VRデバイス「OculusQuest」が19年春に発売されることも発表されました。
こうした高性能VRデバイスの登場によって、導入コストも大幅に抑えられそうです。
武井:Oculus Questのようなスタンドアローン型デバイスの登場で導入ハードルが大きく下がるのは間違いないです。しかし、Oculus Questも高度なグラフィックはスペック上表現が難しいので、用途次第ではPCVRのニーズも高いと思われます。選択肢が増えるイメージですね。
やはりOculus RiftやVIVEといったPCVRは一定のニーズはあり、今後はスタンドアローン型とパソコンで解像度上げていくかの二極化が進んでいくと思います。
ハード面の進化により、今後より多くのニーズに対応できるようになりそうですね。
コストの話もでましたが、VR導入を考える際の特有の障壁の一つとして、導入効果がうまく見積もれない、定量的に測れない、そもそも自社に必要か判断がつかない、ということが挙げられると思います。これについてはどう考えればいいでしょうか。
武井:導入効果の見積もり方は2つあります。
1つ目は、他社で効果がでた実績をもとに見積もる方法。
この会社が〇〇を何パーセント改善できたから、うちはこのくらいだろうと類推できます。
2つ目は、自分たちで仮説を立てて見積もる方法です。
初めは、10人でこれくらいだったから、何人だとこれくらいという風に、小さいレベルの見積もりから初めて、大きく見積もっていくということが重要になります。
しかし、エンタープライズVRに関しては日本ではまだ黎明期といってもいい状況です。そのため、一つ目の方法は試しにくい状況というのは間違いありません。
こうした事例がない状況だからこそ、2つ目のスモールテストが必要だと思います。さらに、スモールテストを行うことで、思ってもみないような効果の発見にもつながる場合もあります。
特に国内では海外に比べて事例がまだまだ少ないです。
少し漠然とした質問ですが、VRのビジネス導入はどの程度進んでいると感じますか。また、今後エンタープライズVRはどのように展開されていくと思いますか。
武井:徐々には進んできていますが、本格的な普及はまだこれからという感覚です。体験の場が少ないというのも要因ではあると思いますが、NEUTRANS BIZ(Synamonが提供するビジネス向けVRコミュニケーションツール)のデモ体験をやっていると、大企業のイノベーション担当の方でもVRを体験したことある方は非常に少ないです。
いわゆるメガベンチャーと呼ばれるIT企業の方でも、”ちゃんとした”VRを体験したことある人は少ないというのが現状です。
実験的な取り組みは多くあるのですが、業務としての導入は今年が元年だと思っています。
何か目的があってそれを解決する手段としてVRを検討する人が増えてきているので、いろんな事例が今年は出てくると思います。
最後にVR導入を検討されている方へ追加のアドバイスや注意点などありますか。
武井:セールスをしていて一番思うことは、何のためにVRを導入するのか明確にすることが大事という点です。
とりあえずVRを使うことが目的化してしまっていることが非常に多いですが、何のためにVRを導入するのか明確にすることが大事という点です。
とはいえ、体験しないとアイデアが出てこないと思うので、まずはいろんなVRに触れてみることを勧めます。
VRは音楽のライブに近いところがあって、実際に体験してみないとその良さはなかなか理解できません。
また、自分が体験するだけではなく、他の人にも体験を促すことが大事です。
体験した人だけがこれはすごいと盛り上がって、体験したことのない他の人と熱量の差が生じてしまうことが良くあり、ビジネスの場合、その結果社内の理解が得られず頓挫してしまうケースが非常に多いです。
うまくVRの良さを伝えるためにも多くの人に体験してもらうことは重要になってきます。
まずは体験してみることが重要ということですね!
本日はありがとうございました!
武井:ありがとうございます!
Synamonでは企業向けVRコラボレーションサービス、「NEUTRANS BIZ」のデモ体験を受け付けております。
体験を希望する方はぜひこちらのリンクよりお申し込みください!
NEUTRANS BIZ : https://neutrans.space/biz/