VRを研修に導入することで人件費や労働力、資材などのコスト削減、研修の効率化・期間短縮、再現が難しい場面の疑似体験が可能になるといった多くのメリットがあることもあり、近年、VRを社員やアルバイトの研修に活用する企業が増えてきています。
今回はその中から国内・海外を含め代表的な事例をいくつか紹介していきたいと思います。
積木製作
ディベロッパーや建築事務所向けに建築CGパース製作やCGアニメーション製作を行う積木製作は2016年に「安全体験VRトレーニング」という建設現場での安全教育を目的としたVRコンテンツをリリースしました。
建築現場での労働災害をVRで再現、体験できるサービスで、コンテンツのラインナップは仮設足場からの墜落などといった建設現場での危険体験に特化した内容のコンテンツ、配線作業中の感電、製造現場での巻き込まれ体験など多岐に渡ります。
墜落、落下、挟まれ、火傷といった現実では再現が難しい体験をVRにより体験することで従来のビデオを使用したトレーニングでは感じづらかった危機感、恐怖感を再現することに成功し、またそれによる安全意識の向上を図っています。
ウォルマート
ウォルマートは言わずとしれた世界的なスーパーマーケットのチェーン企業ですが、接客トレーニングにVRを導入したことが一部で大きな話題を呼びました。
ブラックフライデーのようなセール時など、顧客が殺到する特殊な状況をVRで再現することで、店舗が混雑した際の対処法をVRで体験学習することが可能となっています。
Walmart is putting 17,000 VR headsets in its US stores for training:https://www.theverge.com/2018/9/20/17882504/walmart-strivr-vr-oculus-go-headset-training-shipments
ケンタッキー・フライド・チキン

米国のファストフード企業のケンタッキーフライドチキンは従業員専用にチキンの揚げ方を学習することができるVRコンテンツ「The Hard Way: A Virtual Reality Training Experience」を開発しました。
VR空間上で実際のキッチンでチキンを調理する場面を体験し、チキンの揚げ方を新人従業員が学習するというコンテンツです。
脱出ゲームのような内容になっており、ゲーム的要素を含めることで従業員のモチベーションの向上も期待できます。
このコンテンツは実際の新人研修の場で活用されており、実際のキッチンで行うと25分かかっていたところを10分で行うことが可能になりました。
KFC The Hard Way:https://www.oculus.com/experiences/rift/1727232890655019/
セコム

警備サービス会社のセコム株式会社はカディンチェ株式会社との協働により、警備業界で初めてVRを活用した社員研修を導入しました。
具体的な研修プログラムは、「煙が充満する中での避難誘導」「避難器具の体験シミュレーション」の2つあり、それぞれの状況に応じた模範的な対応を擬似的に体験し、学習することが可能です。
研修にVRを導入することで、これまでは危険性やコスト面の問題で体験機会が限られてしまっていた研修を、より多くの社員が安全に体験・学習することが可能になりました。
今後は順次研修コンテンツを充実させていき、VRによる体験型研修を活用することで、社員一人ひとりのスキルアップ、サービス品質の向上につなげていく方針です。
詳細:https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0462474_02.pdf
アウディ

ドイツの自動車メーカーアウディは昨年8月に従業員の研修にVRを導入すると発表しました。
従業員はVRヘッドセットを装着すると、ドイツの物流センターにいるかのように現実的なシュミレーションを行うことが可能になります。ビデオゲームにも使用されるコントローラーを持ち、コンテナや部品などを、バーチャルに移動させることができます。
様々な難易度を設定することが可能で、各従業員のレベルにあわせた研修を行うことが可能になっています。また、常に彼らをサポートするトレーナーが付いており、タブレットで従業員の研修の進捗状況を確認しながら、適宜アドバイスしていきます。
また、このVR研修は英語やスペイン語など様々な言語に対応しており、言語設定を自由に変更することができます。
このように、VR研修を取り入れることで教育者のスキルや言語、場所の制約の影響を受けず、どこにいても全社員が同じ研修を受けることが可能になるように、企業にとってのメリットの大きさは計り知れません。
参考記事:https://response.jp/article/2017/08/28/299003.html?from=tprt
パソナ
当サイトを運営する株式会社Synamonは、バーチャル世界を思いのままにカスタマイズできるVR空間構築ソリューション「NEUTRANS SOLUTION」を提供しています。
会議室や店舗、セミナー会場といった「場所」を構築し、複数人がVRゴーグルをかぶってログインすることで、インターネット越しに実際に会っている感覚でのコミュニケーションをとることが可能になります。
人材派遣会社の株式会社パソナと同社グループ会社であるキャプラン株式会社は、「NEUTRANS SOLUTION」を導入しSynamonと共同で、日本に来た外国の方に対する日本流の「おもてなし」接客の方法を学べる次世代の研修サービス「VRおもてなし研修」を開発しました。

VRおもてなし研修
同サービスでは、VRデバイスを着用し、講師と受講生がインターネット越しに同じ空間に入り、「インフォメーションセンター」「店内」「ホテル」「レストラン」といった4つの場面で、訪日観光客への英語での接遇を学ぶことができます。
また、講師はコンピューターではなく人間なので、受講生の習熟度に合わせて臨機応変にトレーニング内容を変えられるというメリットがあります。
今後は百貨店や商業施設などにもおもてなし研修を導入するほか、「地方勤務のためなかなか研修に参加できない」という方のニーズにも応えていきたいというお声を頂きました。
Synamonも引き続きシステムのアップデートを進め、より良い研修システムを目指していきます。
VRおもてなし研修:https://neutrans.space/casestudy/144/
まとめ
紹介させていただいた通り、研修分野へのVR活用は国内外問わず、数多くの先行事例があります。
企業の研修にVRを利用することで、労働力やコストの削減、効率化、再現性の高さといったメリットに加え、コンテンツにゲーム的要素を含めることで社員の業務習得率やモチベーションの向上にもつながり、双方にとって大きなメリットがあります。
このような相性の良さもあり、今後はより積極的な活用が図られていくと予想されます。
記事:中町諒佑