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VR活用

広がるVRのビジネス活用

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VRと聞くとゲームなどのエンターテイメント系のコンテンツを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、3D データの立体視や、情報ではなく体験としてコンテンツを共有できるといった特性を活かし、エンターテイメント領域だけではなく、ビジネスの場面においても積極的に活用されています。今回はそうした取り組みの一部を業界ごとに事例を交えながら紹介していきたいと思います。



医療

医療分野では、手術のシュミレーションやトレーニング、患者データの視覚化、仮想体験による痛みや不安の緩和、精神疾患の治療など、VRを用い様々な問題の解決が図られています。

Holoeyes

出典:Holoeyes

Holoeyesは実際の医療現場で活用されているVRサービスを提供する日本発のスタートアップです。HoloeyesVRは今まで十分に活用されることのなかったCTやMRI画像を3Dデータ化しVR空間内で表示させることで、2D画像でしか判断できなかった患者の状態をより直感的に把握することを可能しました。

また同社は今年4月に新サービスHoloeyesXRをリリースしました。

専用サイトにCT画像から作成されたポリゴンファイルをアップロードすると、VR/MR用のアプリがHoloeyesXRにより自動生成され、利用者はそのアプリをダウンロードして実際の医療現場で使用するといった流れです。

このアプリは術前手術計画や術中でのコミュニケーション遠隔地間での症例カンファレンス、映像を使った教育など様々な場面に役立てられています。

Holoeyes: https://holoeyes.jp/



研修

人件費や労働力、資材などのコスト削減、再現が難しい場面の疑似体験が可能になるといったメリットがあることもあり、近年VRを社員やアルバイトの研修に活用する企業が増えてきています。

積木製作

出典:積木製作

ディベロッパーや建築事務所向けに建築CGパース製作やCGアニメーション製作を行う積木製作は2016年に「安全体験VRトレーニング」という建設現場での安全教育を目的としたVRコンテンツをリリースしました。

建築現場での労働災害をVRで再現、体験できるサービスで、コンテンツのラインナップは仮設足場からの墜落などといった建設現場での危険体験に特化した内容のコンテンツ、配線作業中の感電、製造現場での巻き込まれ体験など多岐に渡ります。

墜落、落下、挟まれ、火傷といった現実では再現が難しい体験をVRにより体験することで従来のビデオを使用したトレーニングでは感じづらかった危機感、恐怖感を再現することに成功し、またそれによる安全意識の向上を図っています。

積木製作所安全体感VRトレーニング:http://tsumikiseisaku.com/vrox/vrtraining/



製造業

製造業においては主に、製造や保守・点検といった実作業のトレーニング、設計段階におけるシュミレーション、VR空間でのプロトタイプ作成の3つの製造プロセスにおいてのVR活用が広まっています。

小松製作所(コマツ)

その一例として、建設機械を製造する小松製作所(コマツ)は開発力強化を目的とし、建設機械の設計にVRを活用しています。

仮想空間において開発中の建設機械を再現し、運転者や整備者が操縦した時の、操作性や視界性、安全性をシュミレーションできる仕組みで、細かな部品の点検や整備も可能になっています。

設計段階から実物のように機械を確認できるようになり、開発・設計に反映して行くことが可能になったため、大幅に開発効率が向上し、開発期間の短縮が可能になりました。

小松製作所:https://home.komatsu/jp/



教育

教育分野においてもVR活用の可能性は大きく、子どもたちの感覚的、視覚的な理解の促進や、バーチャル校外学習といったように授業では訪問できない場所などを体験できたりと活用の幅は広いです。

Labster VR

アメリカでは特に政府が進めているSTEM教育との相性の良さもあり、VRを用いたヴァーチャル実験室など様々な教育コンテンツの開発が進んでいます。

LabsterVRはGoogleと科学関連の教育を扱う企業であるLabsterによって開発されたアプリケーションで、30種類以上ものVR実験室を利用できます。学生は24時間いつでもこの実験室にアクセスでき、専門分野に応じ実験用設備が用意されており、実際の実験室で行う作業がこのアプリのVR空間内で可能になっています。

出典:Labster VR

実験室は専門的な設備が必要で多額のコストがかかってしまい、そのような問題を解決する手段としてVRが活躍しています。

VRを使うことで実験室を利用する人数や、場所、時間の制約も無くなり、できるだけ多くの学生に時間を気にすることなく利用してもらうことが可能になり、さらに、分子レベルで現象を観察できたりと現実世界では不可能な体験までできるので、より直感的に学生の理解を深めることに繋がります。

LabsterVRはアリゾナ州立大学の生物学の学士プログラムなどに採用されるなど、現在北米地域を中心にすでに実用化も進んでおり、今後は世界的な普及を目指して行くそうです。

これまで専門的な実験設備に触れることができなかった学生達にもVRによってこのような機会が増えていくといいですね。

Labster VR: https://www.labster.com/vr/



不動産

不動産もまた、VRの活用が進む分野の一つです。実際に物件に行ったかのような体験ができるVR内見サービスや、不動産業界のソリューションとしてVRが活用されています。

NURVE(ナーブ)

出典:NURVE

NURVE株式会社は物件を探している利用者にVRを利用してもらうことで、実際に物件に行かずに内見ができる「VR内見」というサービスを提供しています。

このVR内見により、不動産屋で意思決定ができるようになるため、従来の部屋探しに比べて、移動する負担や時間、コスト削減などのメリットが生まれました。

こういったVR内見のサービスの需要は高く、これまでに「VR内見」を始め、全景株式会社の「ZENLEI 360」、グリー株式会社の「insideMaps」、リクルート社の「SUUMOスコープ」などがあります。また、近鉄不動産は未完成の物件を内見できるVR体感ルームをマンションギャラリーに設置し、完成後の様子を体験できるプレゼンテーションを行うなど、不動産物件におけるVRの活用は進んでいます。

NURVE:http://naiken.nurve.jp/



建築

建築・建設業界でも、完成予定の建築をVRで再現したり、遠隔地から重機を操縦したりとVRの活用が広まっています。

大成建設

出典:大成建設

大成建設はVR技術を用い、先進的な取り組みをおこなっています。

完成予定の建物内部を実物大で再現できる「Hybridvision」や、遠隔地から重機を実際に登場している感覚で操縦できる、臨場型映像システム「T-iROBO Remote Viewer」など多くのVR技術を活用したシステムを開発しています。

特に、後者の重機を遠隔操作できるシステム「T-iROBO Remote Viewer」は重機の左右に魚眼カメラを搭載し、そのカメラの映像をリアルタイムでHMDに表示することで、リアルな遠隔操作が可能になりました。

また、従来の遠隔操作でのカメラ映像を複数モニターで表示する方法と比べ、HMDを用いて映像を表示するため、作業効率が大幅に向上し、さらにステレオ方式の魚眼カメラを搭載することで、細かい奥行きや距離感といった臨場感を再現しました。

今後、同社は二次災害の危険性が高い災害復旧工事や建築・土木工事などより多くの建設現場に同システムを適用していく予定です。

大成建設:https://www.taisei.co.jp/



小売

VR ペイ

EC分野においても、店舗中心の戦略からオムニチャネル戦略へと移っていく中、VR活用により新たな購買体験が生まれようとしています。

大手ECサービスを展開するeBayは2016年に世界で初めて、VRのショッピングモールを開きました。スマホ上で専用のアプリを起動し、Google Cardboardなどの二眼のHMDで見ることで商品を3Dで確認でき、VR空間内で商品を購入できます。

それに続いて、中国の電子商取引最大手のアリババ・グループ・ホールディング傘下のオンライン決済サービス会社アント・フィナンシャルがVRHMDを装着した状態でVR空間内での買い物の決済まで行うことができるサービス「VR ペイ」を発表しました。

気に入った商品があれば、頷いたり、視線を合わせることで買い物をすることができます。



VR PARCO

出典:PR TIMES

日本国内でも、PARCOグループが期間限定で「VR PARCO」をプレリリースし、アメリカテキサス州オースティンで開催されるカンファレンス「サウス・バイ・サウスウエスト」(SXSW)において「2020年の買い物体験」と題し、VRショッピングコンテンツのデモを出展しました。

このように、小売業界においても消費者へのアプローチの一つとしてVRの活用が進んでいます。

VRによる新たな購買体験が一般的になる日はそう遠くないのかもしれません。

PARCO: http://parco.jp/



旅行

FIRST AIRLINES

本来多くのお金と時間がかかる旅行がVRを活用することで、簡単に疑似体験ができるため、その需要は高く、現在までに多くのVR旅行アプリやサービスが提供されています。

国内においてもVRで海外旅行を楽しみながら、レストラン同様のクオリティの機内食を楽しむことができる「FIRST AIRLINES JAPAN」という施設が池袋にオープンしました。

池袋国際空港という名の世界初のバーチャル空港で、実際のファーストクラスの椅子と同じモデルの椅子に座り、プロ監修のスタッフによる接客を受けながら、ファーストクラスの機内食を再現した本格的な料理を食べることができる新しいVR体験施設になっています。

2018年10月現在、旅行先はハワイ、ニューヨーク、パリ、ローマの4便あり、完全予約制のサービスになっています。

FIRST AIRLINES: http://firstairlines.jp/



Ascape VR

出典:Ascape VR

「Ascape VR」はより気軽にVR旅行を楽しむためのVR旅行アプリケーションで、アプリ内の世界地図から行きたい場所を選び、360度動画でVR旅行が楽しめるスマホアプリです。

このように、VRと旅行コンテンツの相性は非常によく、今後も多くのVR旅行体験サービス、アプリケーションが登場してくると予想されます。

Ascape VR: https://ascape.com/



まとめ

今回紹介したように、VRの活用は多くのビジネス分野で進んでおり、既に活用されているサービスも数多くあります。

多くの企業がVRの特性を活かすことでで低コストかつより効率的で、臨場感をもった効果的なソリューションの提供を可能にしています。

今後、この流れは更に加速していくと予想され、様々なビジネスの場面においてVRを利用することが当たり前になる時代が来るのもそう遠くはないかもしれません。



記事:中町諒佑

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